去年の夏、この文庫本を買いました。
ちょうどその頃は湊先生のサイン会に行った帰りに買った本でした。
この本を読んでからサイン会に挑みたかったーと思うくらい面白かったです。
特に第1編「マイディアレスト」が一番気持ち悪く、ゾワッとして鳥肌が立つ内容で、夏の終わりに読むのには最高のお話でした(現在は冬ですが、笑)。
あー、久しぶりにみる黒い湊先生だと思いましたし、もっとこういうのを読みたいと思いました。
第1編から最高に面白かったから、一気に読むぞーと意気込み読んでいきましたが・・・
ただ表題ともなっている「ポイズンドーター・ホーリーマザー」は、何回も周回して読もうとはならず、ただただ心が痛いです。
いつもなら物語として読めるのに、今回はそれが出来ずに自分と重なる部分が多く、物語として流せませんでした。
物語以外の解説も読んでいて心が痛い。
これがイヤミスなのかも知れないですが、ここまで言うかと思ったりして、頭の中がぐるぐるしました。
私は昔から現在に至るまで、親のことを悩んできましたし、心では毒親と思っています。
でもこの本を読むと、何が正しいとか分からなくなります。
もしかして子どもである私が毒娘なのか?と・・・。
どこから毒親と言われるのか、線引きは難しい

この表題となっている最後の2編は、毒親をテーマにし、母娘それぞれの視点があり面白い構成にはなっています。
ただ母親を「毒親」と言っている弓香が悪いみたいに感じとられる内容になっていますが、果たしてそうなのでしょうか。
深読みなのかもしれませんが、親が子どものためをおもっての行動ならば何でも許されるのですか?と思わせるような母親サイドのお話に感じました。
そりゃあ、周りにとって評判のいい親で通っているのなら、子どもの言動は毒娘にしか見えないでしょう。
周りは外側しか知りようがない上に子どもにしか見せない裏の顔は知らないからそう簡単に言えるわけです。
大袈裟ですが、外面の良い毒親を持つと子どもは不利でしかありません。
外面のいい親は、子どもの前ではあなたの為だとおもってやっているのにとネチネチ、自分の理想のみを望みます。
周りの前ではいい親を演じて、どうしたら子どもが分かってくれるのかね?と可愛らしく相談をする。
そして子どもは周りから親御さんの気持ちを分かってあげてねとチクチク言われる。
親が一生懸命に育ててくれているのは確かなことだし、ありがたいことだけど、子どもの意見を聞こうとしないのは親としてはいかかがなものでしょうか。
意見は聞いてもらえず、ただ従うことに嫌気がさします。
まるで自分自身が親のアクセサリーの一部といった状態。
多分親子関係が上手く言っている人にとっては、我儘、毒娘じゃんにしか思えないでしょう。
世間の声も、弓香よりも理穂寄りの考えが多いでしょう。
でもただひとつだけ言えるのは、その苦しみは本人にしか分からないこと。
他人がとやかく言える問題ではないです。
さいごに
今回は物語の内容としては、冒頭でお伝えしたとおり面白かったです。
こんなに後味が悪いのに、面白いと感じさせる湊先生はやっぱりすごいです。
ただ親のことで悩んでいる人は最後の2編は読まない方がいいのかなとも思います。
私は毒親の海からは遠ざかりつつありますし、母親サイドの気持ちも知れて良かったのかなとプラスに捉えてみようとは思いましたが、私にはまだまだキツイみたいです。
キツイといいつつ、短編ではなく長編で見たかったと思ったりもします。
弓香と理穂が憶測ではなく、ちゃんとコミュニケーションが取れていたらまた違った話になるのかなと想像したりもします。
でもそれじゃあ、イヤミスにはならないのな?
心が苦しくなる話でしたが、改めて考えさせられました。
私は親と距離を置くことで、なんとか電話では落ち着いて話ができる関係にはなりました。
親自身はどう思っているかは分かりませんが、まだまだ親との関係の課題は残っています。
焦らず少しずつ親と向き合っていけたらと思っています。
また半年後くらいに読み返して見ましょうかね。